こんばんは、長尾隆史です。
私たちは、新潟 燕三条でステンレスカトラリー(ナイフ・スプーン・フォーク)を中心としたキッチン用品全般を卸売りしている(有)ナガオという企業です。
前回のVol.4を更新したのが年末最終営業日でしたので、約半年。かなり空きましたね。そんなつもりはないのですが。まずいですよね、あっという間に過ぎてゆく月日。べつに、自分を名だたる企業の方と比較しようとは思いませんが、たとえばAmazon.com。
彼らが米国で創業したのは1994年です。つまり、”創業からたったの30年” しか経っていないにもかかわらず今や世界中で事業を展開し、日本でもかなりの認知度を誇る企業になっている。すごいスピード感でつき進んでいる企業です。
私は、いったいこの半年間なにをやっていたのだろうか…。彼らの同じ期間は、それはそれはハードワークであることが容易に想像できます。
と、そんなふうにして自分を卑下するかのような滑り出しで始まってしまったVol.5。
あのですねえ、こう見えて、あんがいに真面目にやっているのですよ。
ええ、そりゃあ私は足元にも及びませんが、目の前のことを一つづつやっているのです。
先日、刮目した出来事がございました。
神戸の内海芳宏さんの講演を拝聴した時のことです。
地方の地域ブランディング的なことが題だったような気がします。
ぶっちゃけ、全体の内容自体は脇においときます。全部は頭に残っていません。
ひとつだけ、「ああなるほど、そうなのか」とマジで腑落ちしたところがあったのでその部分を詳しく述べたいと思います。
-素人向けと玄人向けの話-
たぶん、ほぼ確実に、いくら公式サイトのすみっコで掲載されているとはいえ、このような雑文を(好意と寛容の目で)みてくれているあなたは燕三条についての玄人です。
ここには、うつくしい田園風景やアートに成り得るクラフトマンシップをもった職人の画像とかは出てきません。
じゃあなにか、ここに打ち込まれている文章は燕で生まれて燕で育って燕で仕事をしている私が、視て聞いて触って嗅いで味わった物や情報を独断と偏見のフィルターを通して生まれてきた文字列です。
あー、マジ、なんでこんなことに早く気がつかなったんだろうか。上記の文字列は、どう考えても素人向けの情報じゃあなかったのです。
語弊のないように、私はいっさい素人向けの情報をバカにしているわけではございません。まったく違います。むしろ逆です。尊敬に値する態度です。現在達している理解のところではこういうことです。
とあるひとりの人間が未開拓の分野になにかの拍子でアンテナが向いたときに、最初はみんな素人です。そして、素人には素人が受け取るべき、受け取ることのできる、受け取って心地のよい、情報というものが確かにあるのです。
例えば、自分が燕や燕三条についてほぼなにも知らないと仮定して、突然に、「あそこの会社の倅がぶっとんで奇天烈でおもしろいんだよね」とか言われても、「はあ、そうですか」。となるだけです。百パーそうなります。私もそう思います。そんな謎情報よりも、うつくしい田園風景や、職人が真剣な眼差しで作る素晴らしいカトラリーの情報のほうが良いに決まってます。
べつに素人向けだからといって、上っ面だけのペラペラのものを提供するわけじゃない。そういうのは私が一番好きじゃないやり方。真髄、横文字だとコンセプトでしょうか、背骨がきちんと通っていて、現れてくる表現方法だけが異なっている。そんな感じでしょうか。
そう、うつくしい田園風景だった、アートに成り得るクラフトマンシップをもった職人の画像だって、必要な人に伝えて、満足してもらって、さらにそこからの深化(玄人化)を促すことができるのならば評価されるべき立派な情報だったのです。
こんな単純なことに気がつくまでに15年くらいかかりました。前述の内海芳宏さんの話を聞いていなかったらまだ気がついていなかったでしょう。
ふわっとした言い方をすれば、私がこうやってポチポチと打ち込んでいるのはぜんぜんキャッチーではないのです。荒く切れ味鋭く、オンザエッジな内容を書いてはいると思いますが、そういうのはこちらの入り口に立ったばかりの人には必要とされていないのでした。
このことに気がついたときに、私、顔に手をあてて天を仰ぎました。マジで。それこそキャッチーな映画のワンシーンみたいに。Oh…って感じでね。
ほんの僅かだけ、賢くなった私がこれからキッチン用品の販売において表現する媒体では、素人向けと玄人向けを意図的に使い分けて表現するつもりです。急に方針転換して日和ったなこいつ。安心してください、ここはずっと玄人向けの場です。言いたいことを、言える範囲で、好き勝手にしゃべり続けます。私の芯にあるものは反骨であり、傍流にすらなれないトリックスター、道化がやっていることにしかすぎないのだから。
さて、気を取り直してもう一節。
店。実店舗のことです。
そう、冒頭でも申し上げた通り、私たちはキッチン用品の卸問屋。
いろいろと形態は異なりますが、小売りをやっている企業様に製品を買っていただくことを商いの主としております。
でもまあ、時代っすよね。ちょう雑に言うとそんな感じ。
とうぜん、メーカーさんのNB(ナショナルブランド)品を右から左に売るだけではもうやっていけないのです。そういう時代なのです。
なので、流通段階にいる各社は自社のPB(プライベートブランド)品を企画して製造してもらって自社の名前で製品を世に問うてます。大人の事情で大変恐縮ですが、PB品はなにかと、あらゆる面で制御がしやすいので非常によいのです(その分自社ブランドなのでいろいろとリスクを背負いますが)。で、その話を私たちに当てはめると、これまで私たちナガオのPB製品はほぼ全てインターネットのECでしか扱っていませんでした。
非常に有難いことに、「東京で売ってる店はどこですか」「大阪で売ってる店はどこですか」けっこう問い合わせがあるのです。「すみません、ネットだけなんです…」私は申し訳なく思いながらいつも答えていました。むむむむ、やっぱり、そうか。手にとれる場所が必要なんだ。リアルな接点、だいじ。
なので、新潟 燕三条で恐縮ですが、この度実店舗をオープンさせることになりました。
イエーイ!
まあ、実態はもう少し複雑で、そんなに短絡的に実店舗オープンを決定したわけではないのですが、とりあえずは真実の一端を示しているのでそういうことにしておいてください。ご足労にはなると思いますが店に来てくれたらいくらでも玄人向けの話をします。酒なんか呑んでしまった日には永遠と話し続けます。ええ、知ってます。誰も得をしません。お金と記憶を失うだけです。
実店舗ができる場所は、燕市 宮町。けっして、外からのアクセスが良い場所ではありません。が、そこは旧市街地のど真ん中、商店街なのです。センターオブザローカル。TVに映し出される地方の昔ながらの商店街を思い浮かべていただければ、その映像とそう相違ないです。
そんな場所で、この十年くらいで、いろいろなことを、いろいろな方法で始める人たちが現れてきました。大資本やチェーン店はひとつもない、ローカル中のローカル。こういった現象に、いろいろと異論や懐疑がある人はたくさんいるでしょう。身も蓋もなくオブラートにも包まなければ私もその一人です。
けれども、Do it.
私は自分の順番を感じました。だからやるんです。とにかくやるんです。
事業計画?知らねえよ、そんなこと。やるからには、今の自分がもてる全てをそこにつぎ込む。それ以外のやり方を知らない。根っこの部分では洗練や構造に興味はない。あっちへいけ、机上の計画の中に生身の人間存在を絡めとろうとするんじゃない。私は遁走しならが歌い踊る。トリックスターで構わない。道化で構わない。斜にも構えない。それらの役割を真正面から受け止めて生きることに決めた。
勝手にさせてもらう。
誰も見たことのないものをやる。それだけは約束できます。
現在の予定では11月ころに始めます。
また、ここの場所でアナウンスします。
小さなお店ですが、宜しくお願い致します。
店名は
キッチンラボです。
明日から展示会です。
霞を食らって生きているわけじゃない。いつだって真剣勝負。
今回はこの辺で、それではまた。
2024/07/01
ハンバーガー屋さんはやりません