越後商人のべつに悪くはないコラム vol.3

こんばんは、長尾隆史です。

 

私たちは、新潟 燕三条でステンレスカトラリー(ナイフ・スプーン・フォーク)を中心としたキッチン用品全般を卸売りしている(有)ナガオという企業です。

 

さて、前回では秋の予定をざざっとご紹介しました。

それらの実施ついて、私の拙い感想を言っても仕方がないので、ここはひとつ、わたくしを離れて、お客さん目線に立ってみての、ぎゅぎゅっと凝縮させた振り返りです。それでは以下、どうぞ。

 

*燕三条 トレードショウ

国内外のバイヤー様、商社様、小売店様向けの燕三条展示会。

どうだろうか、いい商談やバイイングはできたのか。わからない。今の時点ではなんともいえない。ひとつだけ確かなことはやたらと旨い酒を呑んだ。明るい昼間よりも、濃い夜だった気がする。もちろん、昼間は重要だ。みんなきちんと仕事をしている。そのことはどれだけ強調しても足りないくらいだ。けれど、どうしてか、大抵のことは夜に決まるような気がする。ほんとうのことは、会社と会社ではなく、人間と人間の接点にある。

 

*青空即売会

物流センターの目抜き通りを歩行者天国にして開催する特価品市場。

青空市はさ、毎年、商売の仕入れとして使っているんだ。ここじゃあ朝一が勝負なんだよ。誰よりも早く会場に行って、投げ売りの商品を目利きで選んでカートンで買う。それがおれの商売につながる。ところが、どういうことだ、今年は朝八時まで商品を売ってくれないというじゃないか。マジかよ。こっちはそのために朝早くから来ているというのに。仕方がない、あらかた目星だけはつけておいて、開始の号令とともに買えるだけは買ったさ。狙っていたいくつかの商品は同じ穴の狢の同業者にかっさらわれた。ちっ、来年からはもう少し早く行くわ。

 

*燕三条 工場の祭典 2023

87の事業所が普段は見ることのできない工場を一般開放するイベント。

さっき見たカトラリーつくりの作業工程はとても興味深くて刺激的だった。なるほど、燕三条の製造の一端はこのようにして成り立っているのか。さて、次はどうしようか。スマホで現在の位置情報を確認すると、近くにナガオという企業があるようだ。聞いたことがない、知らない会社だ。どうやら販売所ということになっている。三条のほうに戻るまで少し時間があるから寄ってみようか。車を停めて、のぼりが立つ方へと歩いてゆくと、いきなり遠くから挨拶された。なんだ、この派手なヒゲロン毛の男は。どうやら、倉庫スペースを開放しているようで、カトラリーやキッチン用品がぱらぱらと展示されている。ここで、商品が買えるようだ。というか、そこら辺にベビーカーが置いてあって、さらに小学生が倉庫を走り回っている。ヒゲロン毛の子供らしく、妻らしき女性もいる。会話をしながらウロオロとしていたら、件の女性にお茶を進められた。良くいえば、ずいぶんとアットホームな感じだなあ。一見するとヤバそうなヒゲロン毛も案外にふつうで、売り込みで話しかけてくることもない。そのまま、とくになにも買わずに出てきた。ずいぶんと寒い日だったから、暖かいお茶が優しく身体に沁みた。でさ、今行った工場ってなんて名前だったっけ?

 

と、

いう感じですね。大きなイベントとしては、来年2月の東京ギフトショーまで一段落でしょうか。あ、違いましたね。皆様の直接的な利益になる、セール。ここ何年かですっかり小売業に定着したブラックフライデーのセール。もちろん私たちも参加します。楽天とアマゾンがメインになるでしょうか。BASEは私が完全にコントロールしているので、そこでもなにかできればいいなあ。

 

前回は虚構についてもわけのわからない話をしていましたね。さっき読み返しましたけれど、書いた本人ですら意味不明です。ひとつだけ確かなことは、ビールやジントニックを呑んでいるうちはマシだったものの、ウイスキィを呑んでいるあたりで現実と虚構の境目が曖昧となって、最後の店では白ワインを水代わりに呑みながら永遠と同じような話を繰り返す。ふうん、それ、はたして誰の話なのだろうか。お酒はたのしくほどほどに。そうできれば苦労ないわ。

 

11月の頭に、東京ディズニーリゾートへ行ってきました。妻と子どものリクエストを実行したかたちですね。私自身はおおよそ30年ぶりくらいに行きましたね。夢の国。妻と子どもたち楽しんでくれたのが、なによりです。二日目の昼間、シーでショーを観た私がぼそりとつぶやく。「これは、究極の虚構だ」。揶揄や皮肉はいっさいない。あれだけのものを創り上げていることに、ただただ畏怖に打たれ、感嘆とした。後日、妻との会話。「年パスもあるんだって」「へえ」「片方だと7万、両方で10万」「おれたちは無理にしてもさ、関東圏の人なんかはさ、それ買って週1で行ってる人も少なくないんじゃね?」「いや、ヘタすると仕事終わりで毎日かもね」「やべえな、それじゃあどっちが現実でどっちが虚構かわかんなくね?」「大丈夫、アンタ以外はみんな区別がついてるから」

 

今年の冬はどんな感じになるんでしょうかね。雪、あんまり降らないで欲しいなあ。雪好きの方には大変申し訳ありませんが、出勤前に自宅。出勤後朝一で会社。の、雪かきを毎日やる生活ってあんがいハードモードなのですよ。とくに、除雪車が道の端に除雪してくれた雪(通称:壁)をぶち壊す時なんかは、そうとうな腕力とアドレナリンが必要です。朝からレッドブルの出番ですね。この、壁の話を工場の祭典でいらしてくれた方(たしか愛知県民)にしたら「???」という感じでしたね。「家や会社の出入り口を塞ぐように雪の塊が胸の高さあたりまで積まれている?そんなことホントにあるんですか」わかってます、わかってます、もちろんわかってます。降雪の可能性がある期間、二十四時間、昼夜を問わずにスタンバイしていて、除雪業務に従事してくれている方々を非難するつもりは毛の先ほどもありません。道路の路面という需要インフラの保全が最優先です。この地で冬を暮らす場合、自分のことは自分でできようにならなければなりません。それに加えて、助け合いとお互い様。深い圧雪にタイヤがとられてスタック(通称:ぬかった)した場合、自力での脱出はかなり困難でしょう。いくらアクセルを踏んでもタイヤは空回りするばかり。道を塞いでいるから後続には連なる車列。あああああ。これ、ヤバいかも。するとどうでしょうか。しばらくすると、どこかから、当たり前のように人々が現れて、当たり前のように車を後ろから押してくれて、当たり前のように何も言わずに去ってゆく。だって、お互い様なのだから彼らにとっては当たり前なんです。現実やネットで声高らかにぎゃあぎゃあと騒いで注目を集めることが目的になっている人間とは対極の場所に立っています。お互い様からくる寡黙な優しさ。これ、雪国の非常に好意的な一面としてもっと注目されてもいいんじゃないでしょうかね(ということをぎゃあぎゃあと言う)。

 

どうでしょうか。感じる方もいれば、そうでない方もいるかもしれません。どうやら私はずいぶんとアイロニーを多用する人間であるようです。もちろん、ケースバイケースでTPOなので良識的には行動しているつもりです(つもり)。常識からは少し逸脱している部分があるかもしれません(少し)。ですが、いつ何時も、良識的ではありたい。いつでも気分良くスキップして生きたい。とはいえ、嫌なことや落ち込むことがないわけではない。そんな時は、とりあえず、うたを歌いましょう。好きなうたであれば何でも構わない。1コーラスを歌い終える頃には、あれ、さっきまで何考えてたんだっけ。たぶんそうなれる気がしています。

 

今回はこの辺で、それではまた。

 

2023/11/20

長尾隆史

 

こんなこともあったがそれでも恰好をつけるおじさん